2017年12月7日木曜日

きれいなフライパン

一人暮らしを始めるにあたって、意気込んでフライパンを買った
ブランドとかわからんが、とにかく28cmのやつを1本
それまで、料理なんて全くしなかったんだが一人暮らしだから自分で作るしかない
そう思って、買った
空焼きしたり、油を馴染ませたり、手入れを怠って真っ赤に錆びさせたり
それを金たわしでゴシゴシやって、また空焼きして油を馴染ませたり
とりあえず、目玉焼きは、上手になった

彼女ができた
すんげーかわいいし素直
だけど、料理はぜんぜんダメだったw
たまの休みの日には俺が、ちょっとだけ贅沢してステーキを焼いた
彼女はミディアム、俺はレアが好きだった
このフライパンは、お前と出会う前から俺と一緒に暮らしていると言ったら
彼女はふくれっ面になって、それから笑った

俺と彼女は幸せな時間を過ごした
料理が下手な彼女は、目玉焼きを何度も焦がした
俺は笑いながら、焦げた目玉焼きを美味しく頂いた
大事なフライパンなのに、ごめんなさいと、彼女は詫びた
大丈夫だよと金タワシでこすって空焼きしたら、
彼女はフライパンの深く碧い色を「きれいね」と言った

彼女は、突然、いなくなった
事故だった

俺は今も、時々、フライパンを金タワシでこすって空焼きする
深く碧い色が蘇る
彼女の「きれいね」という言葉が蘇る
28cmのフライパンは、俺と一緒にいる
焦げた目玉焼きはもう食べられないがフライパンのおかげで、
彼女の「きれいね」は今でも、いつでも聞けるんだ

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